担当理事(研修部) 髙橋 智子
令和6年10月17日(木)13時30分より研修部光岡様の進行により本研修会は開催されました。講師に東方薬膳学院 学院長 尹 玉先生を迎え、参加者は会員外も含め37名でした。
今回は体験型ワークショップ形式の研修講演会となり、開始早々より「健胃茶」という薬膳茶の試飲がありました。各テーブルで紫蘇の香りに包まれながら、蕎麦、みかんの皮、山査子などが入った薬膳茶はとても優しい思いがしました。
薬膳茶をいただきながら研修会はスタートし、冒頭に先生よりタイトルに込めた思いをお伺いできました。【心と身体を穏やかに~薬膳の世界へ】最初は「健やかに」とお考えだったそうですが、本来なら秋色深まっていくこの時期は天高く馬肥ゆる秋とも言うように、養生の秋には「穏やかに」がぴったりだと、自然とタイトルを決められたそうです。ただ、今年は少し汗ばむほどの季節外れの異例の暑さが残る中でしたが、先生の穏やかな声と話し方からゆっくりと薬膳の世界へ引き込まれていきました。
薬膳とは、漠然と体に良いイメージがありましたが、生薬が入った食事、苦くて美味しくない、といったイメージが私の中でも先行していました。しかし、薬膳とは特別なものではなく、普段の食事の中にあるもので、すべての食材は薬効を持ち、命を養ってくれるものであり、身体が欲するものを理解し、目的に合わせて食べるものであるとのことでした。目的を理解しなかったらマスコミの健康番組に影響されやすく、食材本位の知識に左右されやすくなります。ある人にとって薬になる食は、またある人にとっては毒になることもあるため、万人に同じ答えはないとのことでした。
自分の目的を知るためにはまず自分を知ること=弁証といい、個人の状態や特性を把握するものと言われます。また私たちの体は陰と陽のエネルギーバランスで成り立っており、陰陽のエネルギーが偏った結果が病気と捉えるとのことでした。なにがどこでどうなっているのか、「虚」(不足)と「実」(滞り)の状態を示しました。必要なものは取り込み、補い、不要なものは取り出す、「瀉」(流し出す)という、個々の状態を把握し対応は千差万別ということにはとても納得でした。
弁証とは元々の体質を含めた現在の気血水のバランス状態をさし、弁病とは病は証が偏り続けて現象化した結果とのことです。例えば、血虚証は睡眠障害、めまい、消化器障害、視力低下、心疾患、高血圧、精神障害、更年期障害などがあります。
薬膳を施す万人共通な目的は、陰陽のエネルギーが過不足なく相対的バランスを保つことが大切であるとのことでした。健康と若さのバランスの条件は陰と陽のバランス、老化はダメなことでも恥ずかしいことでもなく、抵抗しつつも受け入れていくことと話されたとき、抗うことではなく受容していくことの大切さをあらためて感じました。
互いに相手があって自分が成り立つ関係、お互いがお互いを作り出す関係をいま一度気に留めながら、絶え間なく変化する陰陽の関係を受容して過ごしていくことを痛感しました。
先生の講話に耳を傾けながらも、健胃茶の次には「美肌茶」をいただきました。なつめ、クコの実、バラ、紅花が入った美肌茶は目にも美しく、芳醇な薬膳茶でした。さらには「補陽茶」をいただき、心とからだが満たされた時間でした。
人間が健康を保持して生きていくためには、自然の運行に従って生活することであり、これからの秋冬の食養生や生活養生次第では、翌年1年の体調が決まると言われるため、のんびりゆっくり穏やかな秋冬をお過ごしくださいという思いを受け取り、締めくくりました。大変貴重な講話を拝聴し、もっと奥深い薬膳の世界をゆっくりと堪能していけたらと感じました。尹先生、ご参加のみなさま、ありがとうございました。